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戦後からの脱却を 産経新聞・阿比留瑠比氏2023.08.15

東京・日本武道館での全国戦没者追悼式をはじめ、終戦の日は多くの鎮魂や追悼の行事、集会が催される。日本にとって大きな節目を迎えた日なのだから当然だが、この日が「戦後78年」だと強調されればされるほど、相変わらず「戦後」の枠組みの中で語られていることに違和感も覚える。

大きく変遷する激動の世界にあって、いつまで先の大戦から何年という視点にとらわれていなければならないのか。「戦後」とは何か。日本が敗戦国という位置づけに封じ込められ、あるいは自ら好んで閉じ籠もってきた歳月のことだろう。

日本は長年、「歴史は勝者が書くものだから」(外務次官経験者)とそれを受け入れ、外交では謝罪外交、土下座外交を繰り返し、国防はないがしろにし、子供たちの歴史教科書すら外国に当然のごとく干渉されても唯々諾々と従ってきた。

何よりいまだに一度も改正していない憲法が「戦後」の象徴である。バイデン米大統領は副大統領時代の2016年8月の選挙演説で、当時の共和党のトランプ候補に向けてこう言い放った。

「核保有国になれないとする憲法を、私たちが書いたことを彼は知らないのか」

連合国軍総司令部(GHQ)民政局次長として日本国憲法起草グループの実務責任者だったケーディス氏は、産経新聞の古森義久・ワシントン駐在客員特派員に対し、憲法の目的について赤裸々に語っている。

「最大の目的は日本を永久に非武装にしておくことでした」

日本が米国の庇護(ひご)下で経済成長に専念できた時代は、それでよかったのかもしれない。だが、今やロシアによるウクライナ侵略を例に引くまでもなく、中国や北朝鮮の軍事的脅威が厳然と目の前に存在する。相対的に米国の力は弱まっている。

もはや「戦後」から脱却し、新しい時代に適応しなければ日本は生き残れないだろう。

昨年7月に暗殺された安倍晋三元首相を、坂元一哉大阪大名誉教授は「戦後を終わらせた首相」と呼んだ(本紙令和2年10月19日付朝刊)。理由は、安全保障関連法や戦後70年談話で、「戦後長く続いた安全保障の法的基盤における重大欠陥を是正し、また戦後日本外交を必要以上に後ろ向きにした歴史認識問題に一応の決着をつけたこと」などだった。同感である。

過去の体験を検証し、教訓を得ることは大切である。だが、占領政策を引き継ぐかのようにやたらと「戦後」を唱え強調するのは、そろそろやめにしたい。

 |Posted 2023.8.15|