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中国「職業学生」の役目(大阪大名誉教授)

2022年末のこと、中国関係のニュースで次のようなことが伝えられていた。
すなわち、さまざまな国に中国の公安当局が、その拠点を置き、ひそかに「警察活動」を行っている、と。しかし、日本においてはどうなのか、という点について明示は見えなかった。ま、言わばぼかしている。

こうした記事を読んで。老生の感じた気持ちは、何を今さら、というものであった。と言うのも、今から65~6年も前、大学時代に知った「中国人学生」の諜報活動における驚愕の事実が老生の心の中に生きていたからである。まずその話をしたい。老生、中国研究を志していたので、当時、中国と国交があった中華民国(台湾)出身者を主として何人か中国人留学生と親しくしていた。その中の一つが俗にいう名称の留学生であった。

職業学生ーこれは中国製のことばである。すなわち、大学生を職業とする、とでも言うことを示す。彼らは、国家の特務機関の属するものであり、外国の大学に正式に留学しその大学における中国人学生の動向をひそかに調査し、一定の期間に報告することを任務としている。留学生のことをスパイするのではなくて、自国留学生の動向についてスパイするのが任務なのである。

こうした活動は今の「大陸」の中国人にも共通のことであろう。この職業学生同士は知り合いではない、という極めて孤独な立場にあって職務を遂行していた。鉄の意志があったというほかない。ということで、中国人学生の誰が職業学生であるかは、まず分からない。

こういう話があった。
かって老生と同僚であったA氏が東京で、一旦、帰国した某君と出会った。声をかけたが、まったく知らん顔をして去ったという。それはそうであろう。任務を終えて帰国した特務が、再来日するときは姓名を変えて。初めての来日という形で任務に就くのであろうから。特務は警察ではなくて、軍に属する。

もちろん、特務としての訓練を受けているが、重要要点は人柄が他人に好かれることだ。今にして思えば、前期の中国人某君は安物の映画などにお出てくるようないかにもスパイのような感じではまったくなかった。明るい好感の持てる勉学熱心な(いい学生)であった。という点で、老生も騙された一人であるいうことだ。中国は長い歴史経てきている以上、人間が考えそうなことは考えつくしている。スパイなどあって当然のことだ。今さら驚くことではない。

日本にとって大切なことは、彼らのスパイ活動を見抜き、対処できる人材の養成をを行い続けることではないか。
『書経』説命の中に曰く(せつめいのちゅうにいわく)「備え有れば患え無しそなえあればうれえないし」
(大阪大学名誉教授・加地伸行氏の投稿から2023.02.05)

 |Posted 2023.3.6|