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遊 行 僧 【 円空 】 作・演出 こばやし ひろし

遊行僧「円空」は、岐阜県羽島市の出身、円空誕生の地「羽島市文化センターみのぎホール」で2007年2月3日(土)、4日(日)の両日、「劇団はぐるま」(http://www4.ocn.ne.jp/~haguruma/)により4回の公演が行われた。劇団はぐるまは2004年に創立50周年を迎えている。劇団はぐるまの創立者はこばやしひろし氏である。「円空」の作・演出 こばやしひろし氏は、このホームページの作成及び管理者の恩師、恩人である。この芝居が上演されるにあたり「庶民の中のエンクさん」として紹介されている内容を載せることにしました。
日本の坊さんくらい表向きと本年が違う存在はない。「ゴインサン」とか「ゴエンサン」(御院住さんが転じたもの)とたてまつるが裏に回ったら「坊主、くそ坊主」である。私は僧侶である。いろんな経験がある。私が法衣を着て交差点で赤信号を待っていたら、トラックがとまり、運転手が私の顔をみるやいきなり「坊主坊主!くそ坊主」といってぺっとつばを吐いた。むろんつばは届かなかったが、妙に私は腹がたたなかった。朝、職場で上司に叱られ、たまったものを私にぶつけたものかのかなと思っただけである。
あるスーパーでこんあこともあった。子どもが私の顔を見るなり、親しげに「お乞食さん、お乞食さん」というのである。あわてたのはそのお母さんである。見ると毎月、月参りに行く時にお茶を出してくれる御門徒のお嫁さんである。子どもを叱りひきずるように逃げ去った。毎月お布施を押しいただいているからお乞食さんに見えたのだと思う。私は、これでいいと思った。坊さんは庶民の悩みを共有する立場から離れてはいけないはずだ。虚勢を張るからくそ坊主に転落するのである。
エンクさんと親しく呼ばれた円空は虚勢とは縁のない人である。だから全国を遊行して回っても江戸や京都に居つく人ではなかった。地方を求め、岩屋を求め、アイヌを求め、木っ端を求めて仏を刻んで歩いた人である。木彫りの仏像は日本だけとは知らなかったが、そういえば中国の仏さんは石像か金銅物か、乾漆仏で見られるように大きく、金銀朱がごってり塗ってある。一つの権威である。ところが木はどこにでもある。木くらい日常生活に欠かせないものはない。それが仏になるのである。それも何も塗ってない【しら木】の仏さん。エンクさんの仏には権威のひとかけらもない。これこそ庶民の仏さんといっていいだろう。その庶民のエンクさんを舞台に乗せなければならない。
?円空(えんくう)寛永9年(1623年)美濃の国に生まれる。幼い頃、母を洪水で亡くす。20代半ば修験の道にはいり、その後、津軽、北海道に渡る。?伊吹修験(いぶきしゅげん)伊吹山は滋賀県米原氏伊吹と岐阜県揖斐川町春日の境に位置する。標高1,377メートルの霊山である。記紀神話には「荒神」(荒ぶる神)として霊威が知られている。
こうした荒々しい霊がとどまる山で修行する修行者は、優れた霊力を保持する宗教者として民衆から尊敬されていた。円空は北海道の洞爺湖観音の観音像の背名に「江州伊吹山平等岩僧内」と刻み、伊吹山の行道岩を巡る修行をしたことが知られる。

 |Posted 2007.3.10|