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新型コロナで世界は変わった


新型コロナウイルスのの危機は格差の拡大や民主主義の動揺といった世界の矛盾をあぶり出した。経済の停滞や人口減、大国の対立。将来のことを高をくくっていた課題も前倒しで現実となってきた。古代ローマ平和と秩序の女神「パクス」が消え、20世紀の価値観の再構築を問われている。

「人々は同じ嵐に逢いながら同じ船に乗っていない」。米ニューヨーク市の市議イネツ・バロン氏は訴える。同市は新型コロナで約2万4千人もの死者を出した。市内で最も所得水準の低いブロンクス区の死亡率を10万人あたりに当てはめると275。最も高所得のマンハッタン区の1.8倍だ。3月の都市封鎖も低所得者が多い地区の住民は「収入を得るため外出し、ウイルスを家に持ち帰った」(同氏)命の格差が開く。

危機は、成長の限界に直面する世界の現実を私たちに突きつけた。
古代ローマ、19世紀の英国、そして20世紀の米国。世界の繁栄をけん引する存在が経済や政治に秩序をもたらし、人々の思想の枠組みまで左右してきた。ローマの女神にちなみ、それぞれの時代の平和と安定を「パクス」と呼ぶ。だが今、成長を紡ぐ女神がいない。(2020.09.07 日経新聞)

■ 【パクス】は、ラテン語「Pax」はローマ神話の平和と秩序の女神。18世紀の英歴史家エドワード・ロマーナの五賢帝時代を「パクス・ロマーナ(ローマによる平和)」と評し、覇権国によって安定と繁栄がもたされる時代を指す言葉となった」

 |Posted 2020.11.4|