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中国観(2020年7月・M.FUレター)


いまやアメリカと世界の覇権を争う存在にまで大国化した中国。その隣国である日本にとって、その動向は無視できません。今回は私個人の中国観をお伝えします。
【分裂過程に入りつつある】
中国の歴史を振り返ると、中国は常に分離と統一を繰り返しています。春秋戦国時代より小国分立の中から統一の動きが生まれ、最終的に統一国家となる王朝が成立します。この王朝、しばらくすると世の中がうんできて国内から反政府運動が現れ、最終的に王朝は崩壊し、群雄割譲の状況に陥ります。そこからまた統一の動きが始まります。この分裂と統一のサイクルは、ほぼ、100年単位で繰り返していると見ています。

こうした視点で現在の中国を見ると、1910年の辛亥革命で清朝が倒れてから、約40後の1949年に共産党王朝と言える中華人民共和国が成立しました。ただ清朝は一気に崩壊したのではありません。1840年に始まったアヘン戦争でイギリスに負けた頃から、すでに衰退は始まっていました。それから70年かかって崩壊し、その後しばらく群雄割拠状態が続き、40年かけて統一が実現したのです。

統一から71年が経過し、現在、習 近平体制は盤石のように見えますが、香港の動きをはじめ、国内に広がりつつある大衆の政権への不満を考えれば、底流ではすでに崩壊への萌芽は芽生え始めていると思います。私は、今後さらに強権化が進んでいくと思いますが、それは無理やりに力で抑えなければ抑えられないくらい不満が高まっていることの裏腹と見ています。力で抑えれば抑えるほど、逆に反発も強まり、それが次第に政権への体力を奪い、いずれは崩壊へと至ることでしょう。

【体制崩壊は常に民衆蜂起から】
中国には昔から易姓革命という思想がある。易姓革命ととは「天使は天命によってその地位を与えられて天下を治めるが、もし天命にそむくならば、天はその地位を奪い、他姓の有徳者を天使とする」という思想です。この天命は民意と解され、民衆はときの皇帝が自分たちの意に沿っていないと思えば、皇帝をひきずり下ろしてよい、と考えられているという。事実、中国の歴代王朝は、太古の昔から黄巾の乱や太平天国の乱のように必ず何らかの民衆蜂起がきっかけとなって崩崩壊へと至っている。だからこそ共産党政権は雨傘革命と呼ばれるこんこんの民衆蜂起に神経を尖らし、何としても抑え込もうとしている。この抑え込みは短期的には成功するかもしれません。しかし長期的には失敗に終わり、私は、後世の歴史書には「香港で起きた雨傘革命が共産党政権崩壊にのきっかけとなった」と記述されるようになると考えています。

【家族を信じ国を信じず】
私は「中国人は家族は信じるが国は信じない」と考えています。なぜなら歴史上、国は何度もできては滅んでいるからです。国が滅びれば、その国が発行した通貨やその国の下で担保される土地に対する権利なども全て価値がなくなります。永続しないものは信じられないのです。一方、家族の血のつながりは永遠に変わりません。だからこそ国ではなく家族を信じるのです。この中国家族の固い絆は、国境を越えてつながり、強固な華人ネットワークを形成しています。私はこの華人ネットワークが、今後、共産党政権を衰退させ崩壊へと導く原動力になるのではないかと思います。なぜならばこのネットワークはいくら共産党政権でも、その影響下に置くことはできません。したがって国の内外でいくらでも反政府活動をしたり、それを支援することができるからです。「歴史は繰り返す」という言葉がありますが、4,000年の歴史がある中国だからこそ、歴史は繰り返されると私は思います。

 |Posted 2020.9.6|