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価値創造「光」が原動力(ノーベル賞受賞者・晝間輝夫氏の講演会から)

浜松ホトニクスの晝間輝夫社長が『出来ない』と言わずにやってみろ!と題して、第342会中日懇話会で講演した。出席者を前に「わからんこと、知らんことを見つけるのが科学」と、光技術の重要性を訴えた。

【ビジネスの極意】
人類は、すべての知識を集めても知らないことがいっぱいある。30年数年前に外国で研究者と話をして、科学とは心理を追いかけるものだと分った。産業は競争だが、その極意は「これをしっている、できるのはおれだけだ」ということを見つけること。勝つためには人類の未知未踏を見につけなければならない。明治以来、日本は外国の技術導入や産業の模擬に終始した。

だが高柳健次郎先生(浜松ホトニクス創業者、堀内平八郎氏の恩師)は、光を電気に変換するテレビジョン技術を日本で最初に始めた。幸運の女神は、前髪はフサフサだが後ろ髪はない。だから前から髪をつかむしかなく、誰かのまねでは(髪のない)後ろからつかもうとするようなものだ。

【光の魅力】
(光を構成する)光子は、電子の軌道を制御しており、原始同士を結びつける役割。もし光がなければ、暗闇になるどころか物質自体が作れず、われわれは(分解して)ドロドロに溶けてしまう。

いわば、光はモノをつくる”のり”みたいなものだが、知らないことは山ほどあり、光技術は非常に奥がふかく、独自の境地を開いていける。例えばポジトロン(プラス電子を持つ陽子)を利用して、人間の生態機能を解剖せずに調べられ、がんなどの病巣をを早期発見、治療に役立てられる。また日本は、原材料がない、エネルギーが高価、土地が高いという三重の荷重があるが、これを克服しようと30数年前から(無限のエネルギーが生み出せる)レーザー爆縮核融合や、日本しかない産業用原材料の生成に取り組んでいる。

ビジネスは、人類に新しいピジョンを与え、新しい価値を生み出すものでなければならない。そのための原動力が光ではないかと思う。小柴昌俊東大名誉教授がノーベル物理学賞を受賞したニュートリノの発見も、もともとは陽子の崩壊を測る狙いで始まった。全身全霊の努力があってこそ何かが出てくるのではないか。そのためには目先の問題を素朴な心で考えるしかない。

中日新聞主宰の第342回中日懇話会・2003・10・25日の中日新聞より

 |Posted 2006.8.5|