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トップの流儀 「美点凝視」プラス面を刺激する・人間的成長のストップに、石原慎太郎知事の発言 「老いを迎えて討て」

現代のビジネスマンには、何が必要なのか。特に指導者となる人間には、何が要求されるのか。筆者は三つの条件をあげる。
第一は「問題分析力」である。さまざまな情報や問題を分析し、物事の本質を見極める能力である。第二は未来社会をビジョンとして描き、それを形あるもの作っていく、すなわち「未来想像力」である。そして第三が「人間関係能力」である。
人間は一人では生きられない社会動物である。ある経営者は「その人にどんな才能があろうとも、人間の折り合いの悪いのは使いものにならないね」と強調する。良き人間関係を持続するにはそれなりの工夫があって、筆者は「美点凝視法」を勧める。判りやすく言えば、相手の長所を指摘して位置付けることである。どんな人間にも、欠点があれば長所もあるものだ。欠点を指摘して抑えつけるのも一つの方法であるが、美点凝視はその反対である。
かっての名経営者たち、松下幸之助、木川田一隆、永野重雄、土光敏夫、新藤 恒などはみな一様に叱り方がうまかったが、一方では褒め上手だった。厳しさの中に優しさを同居させて、そうした人間関係能力で人の心をつかんでいったのである。
こうした先輩たちのやり方を実践してきた人に、牛尾治朗は「現代のような時代には自分のことさえ整理がつかず、自分自身を見失っている人が多い。それだけに優れている部分に同調し、知的興奮を与え合う人間関係がますます重要になる」という。牛尾の官界、政界、経済界に広がる人的ネットワークはその辺に秘密がありそうだ。そうした人間関係を持続させるためには、長期間にわたってお互いに与え合う何かを、その年齢に応じて交換することが大事になってくる。
従って、我々は何歳になろうとも、人間的成長をストップさせてはいけない。「老いを迎えて討て」と言う石原慎太郎都知事のように、70の域を超えて成長を続けている人がいるかと思えば、50代になると勉強心を捨てて、過去の人間関係だけで生きて行く人間もいる。成長することを放棄してしまった人には、良き人間関係は持続できないと肝に銘じるべきだろう。
(月刊誌・Agora・March2003・トップの流儀・飯塚昭男著から引用)

 |Posted 2006.8.5|