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地球上に終戦を  (日本航空機操縦士協会副会長・小林宏之氏)

終戦の翌年生れた私は「終戦を知らない子供たち」の一人だ。ただ、一パイロットとして、ベトナム戦争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争を上空から眺めてきた。ベトナム戦争では、夜間上空を飛行中、眼下地上戦の砲火が広がるのを何度も見てきた。サイゴンが陥落した日も、その上空を飛行したが、ベトナムの管制との通信はほとんどできず、何が起こっているか全くしらずバンコクに到着。その直後に歴史的な事実を知った。

イラン・イラク戦争中、ペルシャ湾付近を飛行する際には軍用機と間違われないような細心の配慮が必要だった。イランの民間機が、アメリカ海軍ミサイル巡洋艦に誤撃墜されたこともある。会社から空域での飛行の安全性を調査するよう命じられた。湾岸戦争当時は、イラクのスカッドミサイルの性能やフセイン政権が生物化学兵器を使用する可能性まで調べて飛んだ。20世紀は戦争の時代だった。

一方で、高度一万メートルから地球を見続けて浮かんでくる言葉は【かけがえのない地球】である。白い雲、緑の森、青い海に包まれた地球は、神秘的なまでに美しい。この美しさを生み出すのは、地球に存在するものすべての調和だ。その調和を破壊する行為の一つが戦争だろう。21世紀は、生物の多様性だけでなく、人間も国も互いに多様性を認め合い、争いや戦争のない共存・共生が世紀であってほしい。 (このHP管理者は小林氏の講演を2回聴いた。危険な国際線の航空機操縦をしながら世界平和を常に願う人物である)  2011年8月15日。中日新聞の夕刊から引用

 |Posted 2011.8.16|